札幌市内にある創業40年の歴史を持つジュエリーショップM店のF社長とお話する機会をいただきました。
F社長はとても柔和な印象の方で、お話を聞いていても優しさが伝わってきます。お客様の事を思ってご商売をなさっているのが良く分かりました。
そんなF社長から色々とお話を聞く中で、この会社ならではの価値、そして使命のような物を感じましたので、F社長の了承を得て記事にさせていただきました。
※この記事に書いてある戦略はご提案であり、M店が実際に行なっているマーケティングではありません
宝石業界の現状とM店の立ち位置
F社長曰く、ジュエリー業界は縮小しているとの事。その原因としては
- 人口が減っている
- 中産階級・中流意識の低下
- 新規参入による専門化(ブライダルジュエリー専門店 修理・リフォーム専門店など)
という辺りが大きいそうです。どこの業界であっても、同じ様な悩みを抱えているのではないでしょうか。
そんな中、ブライダルジュエリーだけは何とか需要を維持しているそうですが、それも頭打ちであるとの事でした。
その様な状況の中、F社長は自店の強みとして
- 自店でしか扱えないブランド数の確保
- 高品質で適正価格の老舗メーカーを中心に扱っている
- お客様の立場に立った接客
を挙げていらっしゃいました。ジュエリー業界では、メーカーやブランドごとに地域で扱える店舗数を調整しながら共存を図っているのだそうです。(ブランドの希少価値の向上)
地元の宝石店が次々と閉店していく中、お店を続けていくという事がいかに大変な事かが伝わってきました。F社長は謙遜されていましたが、恐らく相当な努力をされているのでしょう。
売上を確保している要因
ジュエリー業界は、他の流通業界と大きく違う点がありました。
- 高価な買い物なので、実物を見ないと買わない
- インターネットで買うよりも実店舗で買う方が安い(という事が多い)
インターネット通販での買い物が一般的に普及している中でも、通販はそれほど脅威となっていない様なのです。これは実店舗にとっては売上確保の大きな要因です。
また、高価な買い物だけに一店舗だけ見て決めるという事が殆ど無いため、プロモーションをある程度かけて検討材料の中に入れば、M店の強みである“店舗での接客”により優位に立てるというのも要因の一つでした。
この辺りが、どうやらM店が現状を維持できている仕組みの様です。
M店の価値と使命
ではこの先、M店はどの様に発展していくべきなのでしょうか?
F社長とお話ししながら出来上がった、現状を活かした上で行えるマーケティング戦略をご紹介します。
価値について
まず、M店が現在持っている要素の中から、マーケティング戦略に積極的に使っていくべき強みを挙げてみましょう。
- なんといっても“40年の歴史”
- F社長の温和な人柄(お客様の事を心から想える性格)
- 大切に育ててきた顧客
これらはM店にしかない物たちです。他の店舗がどんなに頑張っても手に入らない物なのです。
マーケティング戦略は千差万別ですが、今回はこれらの要素を活かしていく戦略、そして新規のお客様をターゲットに考えました。
入り口を考えよう!
戦略を立てる際、入り口は一つの重要なポイントです。今回の戦略の入り口は、M店の売上構成の中でも大きな比重を占めているであろう“ブライダルジュエリー”とします。
現状、新規顧客の入り口は確立されているため、流入してきた新規顧客をいかにリピート顧客に育てていくか?または紹介をいただけるか?をポイントにします。
次の機会を演出しよう!
まず、ブライダルジュエリーのお客様にリピートして頂くため、次の機会演出を考えます。
結論から言うと、結婚する時の気持ちを利用します。
皆さんも(ご自身、友人など)経験があるかと思いますが、結婚というイベントはとても神聖な気持ちになります。気持ちがとても綺麗になりますよね?
育ててくれた親に感謝し、これから生まれてくるであろう子供に思いを馳せ、誰しも新しい自分に生まれ変わるかのような気持ちになっているのです。
両親へのプレゼントや、これから訪れる記念日の為にジュエリーを買う決意を促すのには絶好の機会です。
ただ、ここで大切なのは“自店の売上をあげる”為ではなく、お客様に“ハッピーになっていただく”為にジュエリーを買うという方法をお知らせするという気持ちでいる事です。
実は、これはF社長の人柄を価値に変えているのです。F社長だからこそ自然に行える手法なんです。言い換えれば、M店の価値は以下の様になります。
- M店は(心からお客様の為に)イベントの思い出づくりをお手伝いするお店
プレゼンで心を動かそう!
もちろん、ただ紹介するだけでは「ああ、そうか!」とはなりません。そこでもう一つの強みを活用し、プレゼン(お店での接客)を行います。
他の記事でも書いていますが、人はストーリーに心を動かされます。ストーリーを接客で伝えてあげるのです。
そして、そのストーリーは大切に育ててきた顧客の中に必ずあるはずです。
大切な顧客の皆様にストーリーを頂き、価値化するのです。
- こんな時にプレゼントをしたら喜んでもらえた
- 昔買ったジュエリーを大切に使っている気持ち
- 買っておいて本当に良かったと思える記念日
など、連絡が取れる顧客にもう一度お話をお聞きします。コンテストにして賞品をプレゼントし、既存顧客の皆様に新たな思い出を作って頂くのも良いと思います。
そのストーリーをブライダルジュエリーの新しいお客様に伝え、ハッピーな自分を想像して頂くのです。
想像していただければ、次の機会にグッと近づきます。
気持ちの継続をしてあげよう!
それでも、人の神聖な気持ちは長続きしません。
時間が立てば日常に慣れ、大きな出費を改めて行う気持ちは薄れてしまうでしょう。
そこには、顧客のフォローアップが必要になります。
先ほどの方法で集めたストーリーや新しいお客様の声を、SNSやDMなどでお伝えしていく必要があります。潜在的に常に意識して頂ければ、機会の損失は最小限に抑えられます。
予算的に困難だという理由だけで迷われているお客様には、お支払い方法を分割にするなどのご提案をされると良いでしょう。
必要なのは“ハッピーの機会”を逃さない様にしてあげる事
極論でいうと、買うか買わないかはお客様に委ねるしかありません。
しかし、M店が演出してあげられるハッピーならば、それをお客様に伝えるのはM店の使命と言えるのです。
人生の時間は戻りません。いま行動を起こすことによって手に入れることのできる数十年後のお客様のハッピーを、お客様自身が知ることのないまま後悔する様な事だけは、避けて差し上げたいですね。
そして、その為にこそ40年の歴史が価値となります。数十年前にM店で買ったジュエリーが、現在どのようなハッピーを作り出しているのか…それは、他の新規参入のお店にはできない事ですから。
まとめ
長々と書いてしまいましたが、最後に今回の戦略のまとめを書きます。
- F社長の人柄を活かし、“お客様がハッピーになる”為のジュエリーの活かし方をお知らせする
- 大切に育ててきた顧客からストーリーを頂き、新しいお客様の未来のハッピーを作る為にM店が両者を繋げる
- 40年の歴史が持つストーリーを活かし、お客様のハッピーを実現できる様、気持ちを継続させて差し上げる
シンプルに経費をかけた露出中心のプロモーションも重要ですが、この様なやり方もあるのではないでしょうか?
最後に
お話する時間を頂いた上に、この様な勝手なご提案を記事にすることをお許しいただいたF社長様に、この場を借りて心より御礼申し上げます。
御社のご発展を心よりお祈り申し上げます。